Edition 6
不確実な情勢が日常化し、変化に対する柔軟性を備えながら計画を進めていくことがごく普通の状態になった2021年、MUTEK.JPは第6回目のフェスティバルを12月8日から12日の5日間にわたりフィジカルイベントとして開催しました。今年は文化庁委託事業「令和3年度戦略的芸術文化創造推進事業」として開催。お台場での1プログラム以外はすべて渋谷の会場を舞台としました。昨年に引き続き海外渡航が困難な状況の中、国内のアーティストや専門的なコミュニティを紹介することにフォーカスし、そのためフェスティバルのキュレーションはアーティストの表現の境界線を一歩押し広げるようなプロジェクトの実現、経験や実績は少なくとも創造性に満ちた新進気鋭のアーティストがパフォーマンスするステージを例年以上に多く設けたことなどに重点を置きました。人数制限を設けた各公演には結果的に予想を超える多くの人が訪れ、アーティストによるパフォーマンスと観客のエネルギーの交差が確かにみられました。
2020年、2021年と実施したヴァーチャルフェスティバルの要素は今年も継続し、プラットフォームvirtual.mutek.orgにてデジタル化された人格の進化の検証をテーマにしたオンラインエキシビションの開催、フェスティバル当日に収録したパフォーマンス映像を後日、期間限定で配信しました。
数字でみるEdition 6
- 全5日間、東京の4会場を使用
- 限定人数の集客数: 1,569名
- 6つの音楽プログラム、18のフィジカルパフォーマンス、51のヴァーチャルコンテンツを展開
- 2つのフィジカルエキシビション、1つのオンラインエキシビションを開催
- 3つのワークショップを開催
- 国内より39アーティスト、国外より27アーティストが参加
- 22のパートナー企業、行政、文化機関より支援
- ヴァーチャルコンテンツへの訪問者数: 18,161名
A/Visions
フェスティバルの初日に「A/Visions 1」を日本科学未来館ドームシアターにて開催しました。オーディオビジュアルに特化したA/Visionプログラムの第一部ではモントリオールのアートセンターSociety for Arts and Technology [SAT]のキュレーションによるイマーシヴなオーディオビジュアル5作品を上映し、翌日の第2部では2017年のMUTEK.JPで初公演したSynichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Expressによる3Dオーディオビジュアル作品『Noesis』の最新版を4K立体視&8.1ch音響によるライブ形態で上映しました。
Axel Helios CA/QC– Drichtel / Baron Lanteigne & Bobby Tank CA+UK– Anthologie / Desaxismundi & Terminal Wolf CA/QC– Inertia / Past Video & Deathvox CZ+DK– C0R3-C0LL4PS3 / susy.technology CA/QC– Indivisible / Synichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Express JP– Noesis (2021version) Live
2日目に「A/Visions 2」を、今年使用した会場の中で最も広い空間を備える全着席型のコンサートホールLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催。2つの演目のうち、前半はMarihiko Hara & Ryo Shirakiによるピアノ、シンセ、弦楽アンサンブルにサントゥールを加えた編成で織り成された美しいモダンクラシカルな演奏に、天文や地学的イメージとともにプログラミングされた緻密な映像が視覚を導くA/Vショーが行われました。後半はパフォーマンスアーティストコレクティブAntibodies Collectiveが、ノイズやドローン、リズムの反復、恐怖感を覚える詩の朗読を交えたサウンドの展開とともに、多数のパフォーマーがそれぞれ意志を持ち個別にそして全体としてシーンを重ね、映像や特殊装置を効果的に使いながら観客に意識を拡張する強烈な舞台芸術体験をもたらしました。この日の公演の様子はSUPER DOMMUNEとの提携のもと同チャンネルよりライブ配信されました。
Marihiko Hara & Ryo Shiraki JP (Cb: Hiroki Chiba, Vn: Anzu Suhara, Vc: Masabumi Sekiguchi, Vc: Yumiko Iwao, Santur: Kazune Iwasaki) / Antibodies Collective JP –『あらゆる人のための、誰のためでもない世界』
Nocturne
3日にわたり渋谷ストリームホールで開催したアンダーグラウンドでアヴァンギャルドなシーンで脈打つエレクトロニックサウンドに特化したシリーズ「Nocturne」は、世界初演や委託作品、新しいアーティストコラボレーションを含む、若手からベテランアーティストまでが名を連ねたライブパフォーマンスの発表の場となりました。
Saskiaとコンテンポラリーダンサーによるパフォーミングアーツ作品、Wata Igarashiによるマルチチャネルスピーカーを使った没入型サイケデリックサウンド体験、Lemna & Kaori Yasunagaの幻想的A/V、YPYの空間音響を聴かせるライブ、Phewの幽玄かつ圧倒的なエレクトロアコースティックライブなどといった独創的なパフォーマンスが行われたのと並行して、25歳以下を対象に実施したオープンコールから採択したVRゲームパフォーマンスを披露したJACKSON kaki、ビジュアルプログラミングコミュニティTDSWのキュレーションによる2組、NTsKi & Saeko Eharaなど、新進気鋭のアーティストによる挑戦的なセットも披露され、さまざまな気づきを生む批評が飛び交いました。
音楽、A/V、映像、ダンス、パフォーマンス、VR、没入型体験など、同じ会場でさまざまな要素が複合的に絡み合う実験的で革新的なパフォーマンスがなされた一方で、視聴者にアクセスしやすく、共有のトーンやメッセージを見出しながら多様性を生み出すキュレーションの実現が我々の課題としてみえました。
Saskia, Kana Kitty & Yumi Sagara, Hitoshi Sato JP ‒ ロウ / JACKSON kaki JP / Lemna & Kaori Yasunaga JP / Wata Igarashi JP ‒ FLOW, YPY JP / NTsKi & Saeko Ehara JP / dhrma & Yuki Ishida JP / Masayuki Azegami & komakinex JP / Masayoshi Fujita JP / Chihei Hatakeyama & Seiichi Sega JP / Phew JP / Aalko aka Akiko Kiyama JP
MUTEK.JP x WOMB
2017年以来となるMUTEK.JPとWOMBのコラボレーション・クラブナイトを開催しました。Sato aka Satoshi Tomiieの出演が水際対策の影響で急遽キャンセルになったものの代わりにKuniyuki & sauce81が出演し、圧巻のライブセットでフロアを沸かしました。Risa Taniguchiはキャリア初のライブに挑み、DJとしてSapphire Slows、Satoshi Otsukiが出演。オープンコールから採択したLUDO TAKEBE、Santa Naruseがそれぞれ独自のコンセプチュアルなビジュアル表現に挑みました。
Kuniyuki & sauce81 JP / Risa Taniguchi & LUDO TAKEBE JP / Sapphire Slows & Santa Naruse JP / Satoshi Otsuki JP / Manami Sakamoto JP / AIBA JP / MUTEK.JP Soundsystem (Maurice & Koki) JP
Exhibition
MUTEK.JP x Kalkul [Urban Sound Gallery]
MUTEK.JPと複合現実企業Kalkulの協業により、空間オーディオアプリAURAを用いたARサウンドスケープ体験『Urban Sound Gallery』をローンチ。フェスティバルに出演した5組のミュージシャンの新しいサウンドを収録した「MUTEK.DISC」と、MUTEKと縁のあるYuri Urano、Saskiaが制作したコンセプチュアルなディスクを渋谷周辺にレイアウトしました。物理的世界とデジタル世界が融合したギャラリーとして、フェスティバル来場者や一般の方に体験していただきました。
Aalko aka Akiko Kiyama JP / Lemna JP - "Closer to the Boundary" from immersive storytelling "Dusk" / Masayoshi Fujita JP / NTsKi JP / Risa Taniguchi JP / Yuri Urano JP / Saskia JP
Shibuya Riverside Digital Art Wall
フェスティバル期間中の3日間、渋谷ストリーム前の渋谷川壁面をプロジェクションマッピングで彩るアートインスタレーション『Digital Art Wall』を実施。以下の2作品を川岸に描きました。
Immersive Museum - IMPRESSIONISM / Akiko Nakayama JP - RAIN FOREST
Digi Lab
TouchDesigner Workshop
Derivative社とMUTEK.JPの共催によるワークショップを今年は渋谷Castにて開催。ソフトウェアTouchDesignerの中級者から上級者を対象とし、同コミュニティで活躍する3名のクリエイター、川村崇、神田竜、川村健一が講師として登壇し、コンテンツ制作のノウハウを各セッションにて共有しました。
Ableton Workshop
同じく渋谷Castにて開催されたAbleton社のワークショップでは、技術、教育、発想という3つの視点からクリエイティビティを後押しする次の3つのセッションがフィジカルとオンラインで展開されました:「自分だけのオリジナルMIDIコンを作ってみよう」「Inspire the Classroom 」「トラック脱構築」。
XR Audio Visual Workshop & Hackathon
MUTEK.JPとテレポート社の連携により、「XRワークショップ&ハッカソン」を渋谷ストリームにて開催しました。日本大学理工学部航空宇宙工学科や一般社団法人アカデミーキャンプ等の教育機関が参加し、その生徒たち(小中高大学生)が、オーディオビジュアル・ライブ配信のノウハウを共有するワークショップ、実際に仮想空間を作りXRオーディオビジュアル配信をするハッカソンの2つのプログラムを体験しました。
Virtual Festival
2092
MUTEKのヴァーチャルプラットフォームvirtual.mutek.orgにて、デジタル化されたペルソナ(人格)の進化の検証を目的としたオンラインエキシビション『2092』を開催し、国際的に活躍する8組のアーティストによるデジタルアート作品を展示しました。
Pussykrew PL/US / Sabrina Ratté CA/QC/FR / Eva Papamargariti GR/UK / Nicole Ruggiero x Ines Alpha US+FR / Andrew Thomas Huang US / KEIKEN UK/DE / Chris Dorland CA/US / Team Rolfes US
世界各地のMUTEK支部、そしてノルウェーのInsomnia FestivalやEkko Festivalなどの国際的なコレボレーターが推進するパフォーマンス映像を配信する「MUTEK.JP Connect」、MUTEKモントリオールの過去1年間のアーカイヴ映像から厳選公開した「Best of Hybrid MUTEK」を、フィジカルフェスティバルと平行してオンライン上で展開しました。フィジカルフェスティバル終了後は、東京の現場で収録したライブパフォーマンス映像を2022年1月16日までの期間限定でvirtual.mutek.orgにて公開しました。
MUTEK.JP Connect
[Connect Insomnia & Ekko]
André Bratten NO / Nilas NO
[Connect MUTEK.ES]
CLARAGUILAR CAT/ES - Mystery is All, Mathew Jonson & Acid Thermal CA+CATIES - Freedom Engine / Kyoka & Nobuko Hori & Myoung Kang JP+US - Water
[Connect MUTEK.SF+AE]
Dolorblind IN / Aurora Halal + Ezra Miller US / Temp Illusion + Amir B. Ash IR
[Connect MUTEK.AR]
FORMA AR / AVRO10 / PRIFMA AR / Nico Sorín & Efe Ce Ele AR
[Best of Hybrid MUTEK - Selection 2020-2021]
Cy-Ens IR/QC / Chris Salter & Alexandre Saunier US/QC+FR/QC / Desert Bloom CA/QC / Line Katcho CA/QC / Ouri FR/QC / GOLPESAR IR/QC / Phèdre CA / Thisquietarmy x Philippe Léonard CA/QC