Sapphire Slows & Myriam BoucherJP+QC
Sapphire Slowsは、すべてを追求するアーティストと呼ぶべき存在の東京在住のプロデューサー、DJ、ライブパフォーマー。シンセサイザーを演奏し、トラックに漂う不気味でドローンのようなボーカルは影のあるサウンドに美しく彩りを与えている。2011年の東日本大震災で衝撃を受けたことで音楽の道に進むことを決意した。2011年のデビュー後、東京のエレクトロニックミュージックシーンで注目されるアーティストとして瞬く間に世界中のアンダーグラウンドシーンからも注目を集め、北米、ヨーロッパ、中国、オーストラリア、日本国内をツアーで巡り、数々の作品を発表してきた。
彼女のLP、EP、トラック、リミックスは、Not Not Fun、100% Silk、Kaleidoscope、Nous Disques、Kalahari Oyster Cult、Hivern Discs、最近ではAD93といったレーベルからリリースされている。現在も世界各国へのツアーに加え、Red Bull Music Academyへの参加、ロンドンのRinse FMのレジデントなどを経て精力的に活動している。DJとしてはMindgamesやFuture Terrorなど国内屈指のパーティーでのプレイ経験を積み、繊細で力強いグルーヴでフロアをコントロールする機敏に長けている。一方、近年のライブではアナログシンセサイザーの中でも伝説の名機と言われる〈Buchla〉を使用したセットで圧倒的な没入感へと誘う特別な音楽体験を作り出している。彼女の楽曲には、名前のサファイアのような青みがかったSlo-Mo Hazeと呼ばれる特徴的なサウンドや、印象的だがカテゴライズの難しいものなどがある。ミニマル、エレクトロニカ、アンビエント、オフキルターポップなどの要素を取り入れながら、それらを超えた独自の音楽を生み出し、空間やディテール、雰囲気を巧みに操りつつ、ゆったりとしたメロディーと宇宙的なボーカルが唯一無二の世界を作り上げている。
常に進化し続ける彼女の音楽は、ジャンルでは形容しがたいエモーショナルさと紡ぎ出されるストーリーによって確立され、世界各地の音楽通の心を掴んで離さない。
自然現象にインスパイアされたMyriam Boucherは、魅惑的なビデオミュージック作品や没入型プロジェクト、VJ、そしてオーディオビジュアルパフォーマンスの中で、オーガニックとシンセティックな要素を融合させている。繊細で多面的な作品は、音楽、音、映像の間にある親密な対話を探求し、日常的な風景を幻想的で生きているかのように変貌させている。音の波とシンクロし、固体から液体、断片から洪水、プラスチックからプラズマ状へと非常に滑らかに変化することが特徴となっている。
キーボード奏者からビジュアルアーティストへと転身したBoucherは、音楽と映像のリアルタイムな対話に取り組んでおり、クラシックピアノやジャズ、ポストロックに傾倒した後、電子音響学に興味を持ち、学術的に追求した。ビデオミュージックの作曲に関する研究は、映像と音の関係を分類し、このジャンルの分類法の基礎を築く試みでもある。Boucherは音楽の作曲と同じアプローチでビデオ制作に取り組み、デジタルタイムラインをヴィジュアルインターフェースとして活用しながら作品を作り上げている。
現在、彼女はモントリオール大学音楽学部で作曲とデジタルミュージックの教授を務めている。研究・創作活動では、音楽作曲、即興演奏、ディープリスニング、サウンドエコロジー、サイトスペシフィックな創作、没入型テクノロジー、そして学際的な芸術を統合している。芸術は現実を変え、新しい形の繊細な表現を生み出すことができる実践分野であるという観点から、音響、音楽、画像、パフォーマーを統合したオーデイオビジュアル作品や多分野のコンサートにおける知覚と表現のメカニズムを理解して分析することを目的としている。